課題研究

僕の通う学校では、この時期に2年生理数科全員が、「課題研究」なるものに取り組む。グループごとにテーマを設定して、それについて2、3ヶ月で研究からまとめまでを行い、プレゼンテーションを行う。そして、今年は、それらの中から1つ、代表を選び、県下の理数科で発表会を行うというから、先生達もやる気がみなぎっているのだ。


僕は、最初、なかなかテーマが思いつかなかったのだが、最近の趣味からラジオの遠距離受信に挑戦してみたいと思い、それを案として先生に出した。あまり具体的ではないけれど、様々な種類の手作りアンテナを作り、遠距離受信を試みようというものである。少々簡単すぎる気もするが、2・3ヶ月でまとめまで行うことも考えると、この程度で精一杯になりそうな気がする。
さて、テーマは決まった。しかし、この研究、1人ではできないのだ。いや、1人でやっても良いのだが、メンバー同士の協力という部分も要素の1つらしく、4〜6人グループで1つの研究をしなくてはならないのだ。僕は、皆がグループを組んでいる間、先生とテーマについて話し合っていたために、気がついたら“ほぼ孤立”状態だった。でも、多少、僕のテーマに面白みを感じてくれる人達が居て、そこのグループに入れてもらえることに。しかしこのグループ、他にも1つ研究テーマを持っている人がいた。どっちのテーマを研究すべきか、1つにまとめなければならない。本来なら似たテーマを持った者同士でグループを作るべきなのだが、悲しくも、ラジオを研究しようなどという考えは僕1人だけだった。
グループ、テーマの設定はその週の金曜日まで。その間、知らぬ間にグループ内のメンバーが増え、さらに研究テーマの候補まで増えてしまっていた。結局、期限の金曜日までには決めることができず、翌週月曜日、この課題研究のために設けられた時間に最終決定ということになった。
そして最終決定の時間、僕は再び、この研究が少人数でできないか、先生と相談をしていた。現状、約6人メンバーでテーマ候補は3つ。1グループ4〜6人が条件なので、これでは2つのテーマ候補をあきらめる必要がある。
先生の回答はこうだった。
「この時代、どんな研究者にもスポンサーがいるんだ。認めてくれる人を探せよ。スポンサーと同じような人を探せ。1人での研究じゃ食っていけないんだよ。」
…結局は少人数では無理だということだ。でも、1つのグループで複数のテーマを持つことはダメではないらしい。「ならばそれしかない」と思った。しかし、グループのメンバー達が話し合っているのを聞いて、愕然とした。ラジオの研究など、すでに候補にも挙がっていなかったのだ。さらに、初めにはなかった合金の研究が、テーマとして決定しつつあった。
僕が成すすべもなく話し合いを聞いていると、友人が、ラジオの研究はどうなったのかという話を出してくれ、これを第二のテーマにするかどうかが話し合われた。
このグループの話し合いを仕切っていたA君が言った。
「やるなら、そりゃあ、できる限りサポートはしようとは思うよ。」
彼は、最初から僕のテーマに興味を持ってくれていたので、嬉しかったが、サポートとは一体何をするのだろうか。口先だけで終わりそうな中途半端な言い方である。
グループのメンバーのB君は
「サポートって…そんな時間あんのかよ。」
全くその通りだと思った。結局メインのテーマが合金の研究ならば、他人の研究をサポートする余裕などあるわけがないだろう。
結局、メンバーの意見を聞いている限りでは、メインテーマが合金の研究に決まろうとしているなか、ラジオの研究の話を出すことは、明らかに邪魔であるようだった。僕は、いつまでも執着していても皆に迷惑を掛けるだけだと、今回はラジオの研究は諦めることにした。
すると、先日までさっきまで「サポートする」等と言っていたA君がこういった。
「まぁ、たしかにラジオの研究は、成功はしないだろうからね。」



ショックだった。つまりこれは、さっきまで言っていた「サポートする」なんてのは口先だけで、実際は元から協力するつもりもなかったということではないのだろうか。しかも、何をもって「成功」というのかさえわからない。自分の研究テーマに興味を示してくれていたA君からこんなことを言われるなんて、裏切られたようなものである。
自分の研究テーマは誰にも認められなかった。悔しいけど、これが現実だ。社会へでても、認められない者は捨てられる運命なのだろう。逆に、そこで意地を張ったり、怒ったりしたところで何も起こらない。いや、社会なら、何も起こらず捨てられて終わりだが、ここは学校である。いつまでも自分の意見を押し通していたら、「こいつは自己中だ。」と、悪い印象を持たれ、苦しみながらも、あと1年、同じ空間で生活していかなければならないのだ。諦めも肝心だと思って納得するしかない。
しかし、1つ納得いかないこともある。半ば裏切りともいえる発言を受けたとなると、怒りのような、悔しさのような気持ちが沸いてきてしまう。帰りの電車の中でも、東進で自習をしてる間でも、A君の言葉を思い出すたびに涙がこみ上げてきた。あれだけはちょっと許せない。。。

One Response to “課題研究”

  • 笹田 より:

    突然のコメントになることをお許し下さい。A君を自認していますが、笹田といいます。とみやま君のブログについて、友人から話を聞いたために拝見させてもらいました。感想として、大変よくまとまっていると思います。学校では見られない意外な印象を受けました。勿論これに他意はなく、僕はこのブログに対しては好意的に感じておりますので、単にそのように受け取っていただきたいと思います。本来はその印象についても記入したいとは思いますが、この場でそれは不適切かと思い、自粛させていただきます。この事に関してだけは意志の疎通が図れていないの思い、反論、もしくは意見させていただきます。
    確かに僕は、旗から見れば手のひらを返すようは事をしたように見えるかもしれません。ですが、僕は自分の最善をしようとした結果としてこうなったのですから、後悔はしていません。僕が思うところでは、個人の集合は決して集団になれないと信じています。現実は、あくまでその過程である組織ができるにすぎないのではないでしょうか。その中で少しでもみんながやりたいことを折衷し、妥協したりもしていく事の中でメインテーマを決めていきたいと思っていました。勝手にテーマ候補が増えていたのはそのためです。僕個人としては、普段のとみやま君なら、先生の意見にも決してめげることなく自分のテーマを持っているだろうと思っていました。少なくとも、粘り強く交渉して、先生との何らかの結果を出していたでしょう。ぼくはとみやま君をそういう人だと思っていました。きっと交渉はした事でしょう。僕はそれを知りませんが。とみやま君の考えがすべて僕に伝わっていない感じはありましたし、僕自身もとみやま君にすべて伝える事はしませんでした。休日丸々1日つぶして実験内容を調べて考えても納得がいかないアイデアしか浮かばなかったからです。それを伝えるのは酷だと思い伝えなかったこちらの気持ちもここで伝えました。どうか察してください。それなのにこんな風に言われてしまうのは心外です。冗談でなく、1日つぶした人の気持ちが分かりますか?むしろこちらも怒りを覚えています。
    そもそも、こんなところでこんな事を書くのは道徳的にもお勧めしません。学校で話をしよう。とみやま君がこれを確認した翌日にでも、不満があるなら直接言ってください。待ってます。
    追記  このコメントは不快なら消してくれてもかまいません。ですが、個人的にはせっかくだから残してくれる事を期待します。
    ありがとうございました。

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